2016-12-21

人の心をつかむ技術【日展①なぜ、あの絵は選ばれるのか?】

12月初旬、日展を見にいきました。日展は109年続いている日本最大の総合美術展です。今年は一緒に行けなかった親友・和歌子ちゃんのために写真付き展示レポートを書こ〜(。◠◠。)♪

・・と思ったらブログ等にアップするのは作家のokがいるそう。。(撮影はok)

なので絵の紹介でなく、「人の心をつかむ技術」をテーマに書きました。
これが言語化できれば、きっとあなたにも使えるからです。

音楽やファッションなんかのカルチャーを学ぶことが、日本のような成熟したマーケットでビジネスをやるうえで一番の学びになる by 長倉顕太

パブリッシャー長倉顕太さんもいっているけど、美術・芸術はいつの時代も多くの人をひきつけ人を美術館まで呼ぶわけです。

奥深い世界のことを軽く口にしては、いけないかもしれませんが・・
16歳から2年半美術研究所で毎日絵を描き、4年間美大でもまれ、18年間メーカーで商品の企画デザイナーとして働き、今もデザインに関わっている自分なりにまとめてみました。

今回の「日展レポート①」は
・創作(クリエイティブ)とは何か?
・日展の入選の倍率は?
・1位は圧倒的か?
・新人・ベテラン・古参いずれが活躍しているか?
・人を惹きつけるモノを知るには何を見るべきか?
・誰にも真似できない、あなたの惹きつける力とは?

あなたの参考になることがあれば、うれしいです(。◠◠。)

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日展を見るのは今年で4回目。77歳の元気な森さんと一緒です。

日展・東京会場は六本木にある国立新美術館。故・黒川紀章氏の建築は外装も内装も徹底的にオシャレです。何度見ても全身の細胞が「新しい(ŐдŐ)!」って沸いてきます。

うねうねのガラス張り建築。円錐の入り口とさかさまの円錐の柱との対比。高い天井の吹き抜け。独特なデザインの建物を味わうだけでも訪れる価値があります。

国立新美術館は映画「君の名は」でも描かれている2016年の流行スポットなんですよ(。◠◠。)

「君の名は」のデートシーンで使われたカフェ

cafe_kiminonaha

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「君の名は。」の主人公タキが、憧れの先輩とデートしたときにのカフェ、サロン・ド・テ・ロンド。 映画に出てきた料理そのものはメニューに無いそうで、似た料理としてはサンドイッチのもよう。入ってみると、とっても良い雰囲気でした(。◠◠。)

地下1階の広々したショップ、3階の屋上庭園、美術ライブラリは、展覧会に入らなくても楽しめます。椅子がたくさんあってカフェやレストランも各階にあるので、疲れてもすぐ休める居心地のいい美術館です。

千代田線「乃木坂駅」直結。天候が悪くても便利ですね。日比谷線、大江戸線の六本木駅からは歩いて5-10分ほどです。

創作(クリエイティブ)とは何か?

まず、創作(クリエイティブ)って何でしょう?

nitten日展報道関係資料「六人の作家のインタビュー」より

上記6人の作家さんの声をまとめると以下の3点に分けられます。

1. 今もう見ることができない光景・感動を保存しておくこと
2. 一点一点が次に繋がるように覚悟し、考え、挑戦すること
3. 美しくありたい、ということ

この3点について、自分の感じたことは

1. 絵でなくては表現できない保存方法(感情がプラス)

絵の最大の魅力です。

2. 一点一点が次に繋がるように覚悟し、挑戦すること

身にしみます。ビジネスも全く同じです。

3. 美しくあること

日本は今豊かです。必要なモノは足りています。供給過剰といわれる市場の中で他と差別化をするには「美しく心に訴えかけるようなもの」を目指すこと。自分はデザインに関わっている以上、大事にしたいことの一つです。

絵でも音楽でも言葉でも「発信」ということの根っこは一緒。手段の違いだけと思っています。

日展の入選の倍率は?

日展は日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の計5部門あります。今回は2,380点の入選作が展示されていました。 それにしても・・・

japan-art-winning-score※今回記事でまとめたのは黄色部分の絵画(日本画/油彩画)です。

応募総数11,627点(‾◻︎‾)?!
展示作品を見るだけでも大変なのに、審査員の方って大変ですね・・(ˇ_ˇ)

以前日展は「有力会派に所属し、お偉いさんに気に入られなければ入選もステップアップもできない」といわれていました。それが大手メディアに取り上げられ問題になり、名称を「改組新日展」として新しく生まれ変わったそう。現在は外部審査員制度を取り入れ、審査の透明性、公平性をうたっています。


1位は圧倒的?
新人・ベテラン・古参いずれが活躍?

選出は何度も討論と投票を重ね決定したそうです。油絵の審査員の方はこんなことを書かれています。

類型的なもの、奇をてらったもの、もう一歩踏み込んで欲しかったものがあったが、本物の作品には多くの手があがった。特選については、将来の日展を背負って立つ作品が候補に挙がったと同時に、ベテラン、古参の人の作品にもすぐれたものがあり、とても喜ばしかった。改組 新 第3回日展 審査所感より

1. 本物は圧倒的である
2. 新人の他、ベテラン、古参にもすぐれたものがあった

この2点について感じたことは、

1. 本物は圧倒的である

最高の賞だからといって全ての人に最高かというと、違うかもしれません。けれど、上の賞(会員賞以上)の絵は明らかに「違い」を感じました。絵の前に立つと全然、違うんです。賞をとって当然。誰が見てもそう感じるのではないかしら?

その絵の前に立つと、論理的思考が全くなくなります。画力、構図は完璧。意図も明確。絵を描く前のスケッチの段階で良い絵になることが決まっている。そのような絵です。

2. 新人他、ベテラン、古参にもすぐれたものがあった

ベテランはスキルと経験によるデータが積み上がっている、新しいものをどんどん取り入れ常に進化している。今までそう思っていました。私の知る「商品デザイン」の世界はそうだからです。

けれど、日展の作品は畳2畳分ほどの大きさ。描くのに体力もいります。目もよくなければならないでしょうか。古参の方とは70〜90歳くらいかもしれません。自分の知る世界以外のことは、わからないものです。

多様で幅広い年代の「選ばれた作品」が、一同に並んでいるのを見る。背景を想像することで共感したり、学びになるのではないでしょうか。何といっても、「選ばれた超一流の作品」を見ることは良いエネルギーを得られます


入選とそれ以上(特選)の賞の違いは?

作っているひとの想い(コンセプト)は大事です。なぜでしょう?作っている人の想いに「人をひきつけるヒント」がちりばめられているからです。

最初は選者の気持ちになって絵を見たり、選者の声を読んだりしました。けれど結局、作っているひとの想い(コンセプト)を見る方が大事だ、と思ったのです。

コンセプトを知ると、視点が180度変わります。テクニックもわかります。モノづくりはどういう過程でおこなわれているのか、過程を知ること。それによって人をひきつける考え方や見せ方ができるようになると感じます。だから、作者の想い、意図を知ることは大事です。

上位の賞を取るためにはテクニックも必要。けれど、左脳で考えたテクニックだけでは感動がありません。考えてみればそうですよね、私たちはまず右脳で感じるので。

なので、「すごい!」って感じる圧倒的テクニックがない場合、作っているひとの想い(コンセプト)が人をひきつけるものであり、それを知る必要があると思うのです。

中でも作者の、「好きエネルギー」。これは誰にも真似できない、絶対的なひきつける力だと感じます。きっと人は絵から「気」を感じるのです。テクニックなんて感じる余地のないものです。

若い作家には「変に意図したり計算したりでなく、描きたくて心が動いたものを描いて欲しい。売る目的を意識している人が多いと思うので作家魂の意識を高めて欲しい」 10人作家のインタビュー 長谷川 雅也 p5


まとめ

1. クリエイティブとは何か?

  • 今はもう見ることができない光景・感動を保存しておくこと。そのもの(ex.絵)でなくては表現できない、作り手の感情が入った唯一無二の保存方法
  • 一点一点次に繋がるよう覚悟し、考え、挑戦すること
  • 美しくありたい、ということ

2. 人をひきつけるものを知るには?自分で再現するには?

  • 作っているひとの想い(コンセプト)を知ること

3. 誰にも真似できない、ひきつける力とは?

  • 作者の「好き」という気持ち。描きたくて心動くものにあるエネルギー。

 

ここまで読んでくださって、ありがとうございます(。◠◠。)
日展レポート②へつづく

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